愛媛大学農学部3回生を対象に授業の一環として「かつお節削り体験」「飲み比べ体験」
- 3 日前
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※ご指導いただきました先生からのレポートです。
2026年1月15日、松山市にある国立愛媛大学農学部3回生1クラスを対象に、農学部附属農場の食品加工室において、授業の一環とし「かつお節削り体験」「飲み比べ体験」を2時間をかけて実施しました。
今回の活動における主なねらいは、次の通りです。
(1)活動を通して、今までの自分の食生活を振り返る契機とする。
(2)現代の若者が抱えている食の課題を把握し、今後、どのように対処していくかを考える。
(3)「だしの文化」について 調べ学習を行い、自分の考えをまとめる。
まず、和食(だし)が世界中で注目されている理由を考えました。
健康面、新鮮な食材の活用、盛り付けの美しさなど考えられます。我々は全ての世代でかつお節削り体験、飲み比べ体験を通して 和食だしのよさを伝える活動をしていますが、青年層(高校生、大学生などの年代)にも力をいれているのはどうしてかを考えてみました。
多くの青年層の食生活の実態を知り、見直していくきっかけとして位置付けていることを理解しました。関連して「食の常習性」についても考えました。
こういったことを講義室で学習したあと、食品加工室に移動してグループごとに削り体験をしました。削り体験は初めての方ばかりです。
削り方を教えますが、いくら大学生といえどもなかなかうまくいきません。しかし、少しずつ慣れてきてスムーズに削れるようになってきました。削ったかつお節を口に入れて味見もしてみました。そのおいしさに感動している学生が多くいました。
その後、飲み比べ体験をしました。
みそ湯と、みそ湯に自分たちが削ったかつお節を加えたものを入れて飲み比べてみます。
湯は鍋で沸かしたものを使いました。
違いは学生にもはっきりと分かりました。こういった出汁の味に慣れていない多くの学生たちは、最初驚いていましたが、ほとんどの学生たちはおかわりをしていました。
最後に、若者の食が乱れてきており、食に関心をもたない人たちが増えてきている実態を紹介ました。驚いている学生たちが多くいました。専門家によると、こういった食生活をつづけていると寿命が短くなっていく危険性もあるそうです。
現在、一人暮らしをしている学生も多くいます。近い将来、共に生活する方ができたり、親になったりする方もいます。そうなると、自分だけでなく周りの方の食生活も考えていかねばならなくなります。その食生活を見直していく手段として、今回の体験を思い出して、できるところから取り組んでほしいと思いました。
このあと、アンケートをとって分析したり、食文化の視点を加味して今回の体験を振り返ってもらったりしました。
アンケートの分析の1つと、学生の感想を紹介いたします。

【学生の感想(1)】
今回の鰹節に関する授業は、和食や日本のだしが持つ意味や価値について改めて考える機会となった。和食は、素材そのものの味を生かすことを大切にしてきた食文化であり、その中心にあるのが「だし」である。特に鰹節は、日本のだし文化を代表する存在であり、味噌汁や煮物、冷奴など、日常的な料理の中で欠かせない役割を果たしている。
授業では、鰹節がどのような工程を経て作られるのかを学び、荒節の表面についた錆やカビを取り除き、実際に削って鰹節を作る体験を行った。普段は削り節を手軽に使っているが、その背景には多くの時間と手間、職人の技術があることを知り、食材に対する意識が変わった。硬い荒節を削る作業は想像以上に力とこつが必要で、削りたての鰹節は普段食べているものとは少し異なる風味を感じた。
和食を大切にする食育の観点から、幼少期にだしの味を知ることは非常に重要だと学んだ。幼い頃に和食やだしに親しむことで、素材本来の旨味を感じ取る感覚が育ち、濃い味付けに頼らなくても満足できる食習慣が身につくと考えられる。私自身も家庭でだしを用いた料理を幼い頃から食べてきたため、味覚が形成される時期にだしの味を覚え、その後の食生活や健康にも大切だと感じている。
一方で、20歳前後の青年期においても、だしを学ぶ意義は大きいと感じた。自炊の機会が増える中で、忙しさや手軽さを優先し、食事が雑になってしまうことも少なくない。今回の授業を通して、だしを使うことで料理の味に深みが出て、少ない調味でも満足感が得られることを実感したため、今後の食生活や周囲の人に振る舞う料理で意識したいと思った。
荒節から錆を取り、削って鰹節を作る体験は、角度や力の入れ加減が難しく、上手くできなかった。しかしこの経験を通して、食卓に並ぶまでには多くの工程や人の手間があることを改めて実感した。食事を「作業」にせず、だしを通して食と向き合う姿勢を持つことが重要だと思った。
また、だしを大切にすることは、自分一人の食生活だけでなく、身近な人との関わりにもつながると感じた。家族や友人と食事について話したり、一緒に料理をしたりする中で、だしを意識することで和食の良さや食文化を自然と共有できると思う。
今回の鰹節に関する出前授業を通して、和食や日本のだしは、単なる調理技術ではなく、人の生活や価値観と深く結びついた文化であると改めて感じた。今後は、自炊の中でもだしを意識し、和食の良さを身近な人と共有しながら、食事の時間を大切にしていきたい。
【学生の感想(2)】
今回の体験は、私のこれまでの食生活を見直したり、和食について考え直したりする非常に貴重なものになりました。まず何より、かつお節の削る前の状態「枯節」を見ること自体が初めての経験でした。かつお節を自分で削るという体験も初めてだったのでとても新鮮でした。自分たちで削ったかつお節は、スーパーなどで削られた状態で売られている市販のものとは比べものにならないほど味が濃く、口に含んだ瞬間に広がる風味の豊かさに感動しました。今回の体験の中で最も印象的だったのは、「味噌+お湯」と「味噌+お湯」に削ったかつお節を入れたものの飲み比べです。
かつお節の入っていない方は、ただの「しょっぱいお湯」のような味でした。一方で、かつお節を入れた方は、味噌の量が少なくても味がしっかり決まっていて、奥行きがあるように感じました。この飲み比べを通して、和食のおいしさは濃い味付けではなく、かつお節などの「出汁のベース」からきているのだと感じました。うま味がしっかりしていれば、塩分を控えても満足感が得られるという事実を実際に舌で感じることができました。
和食は2013年にユネスコ無形文化遺産に登録され、世界から注目されています。和食が世界から注目されているのはただ美味しいからだけではないと思います。今回実感したような出汁による「減塩効果」や「低カロリー」、「旬の食材」が多く使われているといった健康面に優れ、芸術的で綺麗な盛り付けといった文化的な面でも優れているからだと考えます。食の欧米化が進んでいますが、このように優れた面を持つ和食を次の世代に受け継いでいくためには私たち若い世代が和食を大切にしなければならないと感じています。今の時代、コンビニのレトルトやお惣菜、ファストフードなど、手軽に美味しいものが食べられる選択肢はたくさんあります。私も味の濃いジャンクな食べ物は大好きです。しかし、利便性だけを追求し続ければ、受け継がれてきた「和食や日本のだし」の文化が途絶えてしまうかもしれません。だからこそ、時々は立ち止まって「だしを引く」という手間を大切にしたいなと感じました。私は、現在一人暮らしをしており、どうしても自炊が簡略化されがちで、和食を食べる機会も減ってしまいました。しかし、今回の体験で出汁の本当の美味しさを知ることができました。持ち帰ったかつお節を使い、まずはこれまで挑戦したことのなかった和食作りに取り組んでみるつもりです。
【学生の感想(3)】
和食の特徴を考えたとき,まず思い浮かぶのは素材の味を重要視しているという点である。そして、その素材の味を支えているのが日本のだしであると考える。和食は油を多く使ったり、さまざまなスパイスを用いたりすることは少なく、比較的薄味な料理であるといえる。それにもかかわらず、物足りなさを感じることがないのは、だしによってそれぞれの素材の味をうまく引き出し、まとめることができているからであろう。
現代は非常に多くの調味料や加工食品が開発され、世界の多様な料理を手軽に楽しむことができる、いわゆる飽食の時代である。そのような状況の中でも和食が注目され続けているのは、だしの存在が非常に大きいといえるだろう。もしかすると、食べ物があふれている時代だからこそ、素材そのものの味をじっくりと楽しむことができる和食の価値が、改めて見直されてきているのかもしれない。
科学的に言えば、だしのおいしさはグルタミン酸やイノシン酸といったアミノ酸が、うま味成分として働いていることによって説明することができる。これらの成分は舌のうま味受容体を刺激し、料理に深みや持続的な満足感を与える。そのため、塩分や脂質を過剰に用いなくても、おいしいと感じることが可能になる。しかし、だしの魅力は単にうま味という科学的要素だけに収まらないと考える。
さらに、だしの文化には日本人の国民性が反映されているとも考えられる。日本人は自己主張の強い表現よりも、周囲との調和を大切にし、控えめな振る舞いを良しとする傾向がある。だしも同様に、強く前に出て主張する味ではなく、素材の良さを引き立てながら、全体を静かにまとめる役割を担っている。主役にはならないが、欠けてしまうと料理そのものが成立しなくなるという点に、日本人が大切にしてきた価値観が表れているように感じられる。
また、昆布や鰹節など、自然の素材からうま味を丁寧に引き出すというだしの作り方は、自然を尊重し、無駄を避ける姿勢とも結びついている。人工的に味を足していくのではなく、素材が本来持っている力を活かすという考え方は、日本人の食文化だけでなく、生活全般に通じる感覚であるといえる。
このように、だしは味の土台として和食を静かに支えている存在である。普段の食事の中でだしを強く意識することは少ないが、その働きは非常に重要であり、日本の食文化の奥深さを象徴している。今後は和食を味わう際、料理そのものだけでなく、その背景にあるだしの役割や考え方にも目を向けていきたいと考えている。
【愛媛大学 農学部・大学院農学研究科様公式サイト】



























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